●社会の仕組み、制度、誤解・偏見・差別などに精神障害者が感じる理不尽さ
1.精神障害者が就くことができない職業がある。精神障害を理由とする制限にあっては、医師、看護師、調理師、美容師、自動者運転等の免許から風俗営業、薬局の許認可に至るまで約80の資格や職業を禁止し、さらに警備員としての就業、危険なペットの飼育、図書館等の公共施設の利用、議会の傍聴などの様々な行動を禁止ないし制限している。禁治産・準禁治産を理由とする資格制限は、一般職の公務員からモーターボート選手に至るまで約百数十の資格ないし職業に及ぶ。
「https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n172/n172_017.html#:~:text=精神障害を理由とする制限にあって,ないし制限している。」参照
2.重い精神疾患を患った場合、寛解することはあっても完治しないと言われているのに、なぜ、定期的に診断書を提出し、障害年金や精神保健福祉手帳を更新する必要があるのでしょうか。精神的な疾患にかかったからこそ、安心・安寧で、安定した制度を受ける権利があるのではないでしょうか。寛解したからと言って、制度の級を落とされ、恩恵を受けることができなくなってしまうのは、本当に理不尽です。一生懸命、健常者に近い生活を送れるように努力する甲斐がありません。
3.現在は精神障害に対する理解もだいぶ深まっており、社会資源の情報なども入手しやすくなってきている。しかし、就職氷河期以前に罹患した人には、そもそも、社会資源が枯渇している社会だったため、福祉の恩恵を受けることができることすら、知らずに年を重ねてしまい、高齢になって、福祉の恩恵を得られず苦労している人がたくさんいる。
4.重度心身障害者医療費助成制度については、3障害(身体・知的・精神)の中で等級により、恩恵を受けられない人(精神障害者保健福祉手帳2級所持者)が多くいる。
5.障害者枠で就労した場合、一般就労とは異なり、昇給することはあっても、昇進することはまずありません。そもそも業務自体が事務補助など、他の正社員とは異なる業務を任され、やりがいをそがれるのが当たり前になっています。
6.遺伝性の疾患であるため、親族に婚約者がいる時などは、ひた隠しにされる。旧優生保護法の弊害が現存する。本人は自分の疾患が他人に漏洩することを非常に恐れている。確かに両親が同じ精神疾患を有する場合、最高で50%の確率で、その疾患を子が遺伝する可能性は否めない。片親が疾患を有していても最高で25%の確率を有する。結婚している精神障害者の多くはそれを知っていることや、元々の収入が少ないこともあって、子供を産まない選択をする人も多い。
7.精神障害者であることによる社会的な誤解・偏見・差別(パブリックスティグマ)が現存することもあり、本人は「生まれてこなければ良かった」「精神疾患を患ったから人生のレールから外れてしまった」「もう健常者としては扱ってもらえない」といった自分に対する個人的な誤解・偏見・差別(セルフスティグマ)を抱えざるを得ない状況は変わっていない。
8.金融機関が口座開設などの際に精神障害者を差別し、口座開設を拒むことがある。これは精神疾患などにより投機的な投資から逃れられない人を保護するためのものだが、差別されていることに違いはない。保険・共済に入れないのも同様である。
9.犯罪を犯した者の精神鑑定というものがあるために刑を軽減されることがあるが、多くの精神障害者は平等な裁きを望んでいて、特別扱いされることを望んではいない。多くの精神障害者は、精神鑑定があるために、精神障害者への差別が助長されることを危惧している。
※意見:一刻も早く、改善されるべきです。多数決は民主主義ではありません。この国のあらゆる場で誤った民主主義が横行している気がします。国の方針を決める政治においても右や左といった偏った判断が行われ、本当に困っている人の声が置き去りにされていると思います。誤解や偏見や差別をなくすために「本人抜きに本人のことを話さない。意思決定の場には必ず本人がいる」という1980年代からのフィンランドの国策は見習いたいものです。
文責:蓮田市精神障害者当事者会「そよ風」代表 高木良文 2022/12/10(土)